澳門(マカオ)のカジノブログ:5
その異様な雰囲気の中に交じって、不気味な黒眼鏡の男がゆらりと現れて、ニカッと笑いました。彼は「君は日本人かい?」と声を発しながら、駆け寄ってきます。白くて垢じみた、ふた回りも大きいセーターを着た年齢不詳の男。それはいつぞや澳門(マカオ)のカジノで邂逅してそうな、どこにでもいそうな青年です。彼は海喜(かいき)という名前のようです。
これから開かれるのは妖怪たちの宴。狭い谷底に人々の欲望が渦巻く五反田にある怪奇旅館をふと思い出しました。この混沌たる有様。私は眩暈を感じました。
「今から始まるのは、過酷かつ命に関わる大勝負だ。ドリアンアイスという食べ物を知っているかい?脳天に突き抜ける刺激臭がする食べ物だ。こいつを食べる。今夜、変わり者で有名なベネ氏がここに現れて、参加料5,000HKDで大喰い勝負に参加できるんだが、彼に勝てば20倍の金額をもらうことができる」
海喜氏はまたもや小声で教えてくれました。
澳門(マカオ)のカジノブログ:4
「そういえば、何故キミは澳門(マカオ)に来たんだい?」
「恥ずかしながら申し上げますと、働きたくないからカジノへ行く、これに尽きます。つい先日、闇より深し暗黒企業を退職させていただきました」
「噂によると、ベネ氏へ一世一代の大勝負を挑もうとする怪物がこの界隈を歩き回っているとの情報を聞きつけていたのだが、、、キミではないようだ。しかし、キミも人生の次なる一手を模索しているといったところだね」
「働きたくない」
「しかし、論理で生きてきたような女性が賭け事とは。惨憺たる目に遭わないように祈るばかりだよ。キミのような聡明な女性は、一定期間海外で、英語とプログラミングを10万円程で学べて就職も斡旋してくれるフィリピン政府公式認定 語学学校NILS なんかがピッタリだと思ったんだけどね。一般事務からエンジニアにキャリアチェンジした方のお話なんか面白いよ。そう、このプログラムの良いところはね・・・」
「ふむふむ、へえへえ、むにゃむにゃ」
幾つかの殺伐たる有益な説明を抜けた丑三つ時を回った頃、私は隠された秘密基地の隅において、焼きすぎた餅のように膨れていました。そのとき、室内の照明が少し落とされるのと同時に、ピアノの舞台脇にあるカーテンに隠された大きな扉が開け放たれました。椅子越しに除けば、何やら煌々と輝く、黄金色で統一された広い遊技場がある。各テーブルには、座ると30センチは沈みそうな椅子が2席ずつ、容姿端麗、眉目秀麗なディーラーが風景の一部かのように配備されている。やがて、男女を問わぬ様々な人間が眠そうな顔をしてその部屋に入っていった。もちろん、私も付いて行来ます。彼らは三々五々、オーディエンス席のようなところで腰を掛けたり、タバコを一服したり、青島ビールを啜ったりして、あまり無駄口も叩かない。
酒屋主人が何やら声高らかに宣言、それと同時に何かが始まったのです。
澳門(マカオ)のカジノブログ:3
ゴッホ氏が連れて行ってくれたのは、セナド広場から入り組んだ道を入った東側にそびえ立つ荒廃したビルの最上階です。ガラクタだらけの古いビルで、廃墟に足を踏み入れて行くようにも思えました。ゴッホ氏が錆び付いた分厚く重い扉を開けると、控え目な明かりが漏れてきて、人々の呟き声も聞こえました。汚れたカウンター、拾ってきたような薄汚れたソファや椅子、壁には手書きのメニューがベタベタと貼ってあります。お客は皆、めいめい勝手に陣取ってお喋りをしています。私はゴッホ氏に勧められて青島ビールを飲みました。
働き続ける人生を何とかして、はやく隠居したい。たとえば大原はどうでしょう。ヴィクトリア朝京都の忌々しい喧噪もスモッグもあそこなら届きません。心穏やかに生きていけます。そう、苔むしたわらべ地蔵たちとぷつぷつ語り合うのです。いやはや、そんな退屈な生活に私が耐えられるでしょうか。働きたくないからカジノで生計を立てようとしている小娘に、毎朝タケノコを掘って若竹煮を主食として小さな庵に立て籠もる才能はあるのでしょうか。まだ人生は始まったばかり、これからバリバリ活躍するのです。さあ、待ってなさい世界!気が付けば、そんな悲痛の叫びとよく似た独り言を重ねていました。
一方で、ゴッホ氏は娘さんのお話をしてくれました。妻とは10数年前に離婚して、以前までは娘さんと一緒に暮らしていたようです。娘さんは仕事のために遠方にいってしまっため3年以上会っていない。ゴッホ氏はぽつぽつと語りながら、一度だけ、ぐいと手の甲で目尻を拭いました。
「親が子供に願うことは、ただ幸せになってくれることだけだよ。ただ、会えないのは少しばかり寂しいね。今度転職するという話を聞いたけれど、転職先も遠方のようだ。この地元で職を見つけてほしいというのが本心なんだけどね。」
「転がらない石には苔が付きます。親の心子知らずなんてことはなく、きっと今は色んな経験を積んで、柔軟に生き抜こうとしている時期なのかもしれませんね。娘さんも親御様との葛藤があったかと思います。」
「そうだね。今日はこうやって通りすがりのキミと知り合って、楽しい時間を一緒に過ごせて幸せだよ。ありがとう。」
彼は色鮮やかな鶏のかたちをしたキーホルダーらしきものを光悦茶の手鞄から取り出して、私の手のひらに置きました。
「キミにお守りをあげよう」
ポルトガルで幸運のシンボルと伝えられている、ガロという幸運のお守りだそうです。手のひらで仔細に眺めてみると、ハートのような模様があってキュートです。
「大事にしてあげておくれ」
澳門(マカオ)のカジノブログ:2
セナド広場を二人で北へ辿りました。ゴッホ氏は光悦茶色の手鞄を大事そうに抱えています。亜細亜圏の観光客や正体不明の怪しくもお金を持っていそうな方々が、街を賑やかにしています。
あたりを眺めながら、ゴッホ氏は秘密のエッグタルトのお話をしてくれました。そのエッグタルトは「金龍蛋撻(ゴールデン・エッグタルト)」というのです。エッグタルトは3種類あるというのは存じ上げておりました。香港はクッキー生地の曲奇蛋撻、パイ生地の酥皮蛋撻、マカオ式パイ生地の葡撻蛋撻。その他に金龍蛋撻というものがあるとは。
「そもそも蛋撻(エッグタルト)というのは、ポルトガルにルーツがあり、ポルトガル語でパステイス・デ・ナタと呼ばれているお菓子がオリジナルなんだよ。マカオで食べられるようになったのは植民地時代の1980年代のこと。イギリス人のアンドリュー・ストウ氏が本場ポルトガルのレシピに英国風タルトの要素を加えて誕生したんだ。君も知っての通り、今ではマカオを代表するスイーツにまでなったね。」
「金龍蛋撻というのは、他のエッグタルトとは違うのですか」
「葡撻蛋撻はイギリス人が生み出したエッグタルトだけど、金龍蛋撻は現地の澳門人が生み出したものなんだよ。ポルトガル人が最初に植民を行った場所といわれている媽閣廟で作られたらしい。逃げ出した澳門の植民人がイギリス人の食べているタルトを再現しようと、試行錯誤の末、袋小路のどん詰まりで奇跡のように発明されたのが、金龍蛋撻だ。一説には、海の神龍への祈りが重要なのだとか。名前も製法技術も知られていない、謎に包まれたエッグタルト、味も食感もすべてが違うんだよ」
「それは何処で食べられるのでしょうか」
「今でも何処かでこっそり作られていて、夜の街へ運び込まれるそうだよ。儂は金龍酒店というホテル周辺が怪しいと睨んでおるがね。」
そう言って、ゴッホ氏はクスクスと笑うのでした。
荒廃したビル群の地下にある工場を私は思い浮かべました。中には神龍像と祈り台が並び、黄金色の金型機械から湯気が立ち上っています。調理場というよりは、神聖な儀式をするための場所なのです。気難しい顔をした職人の方々が、門外不出のレシピに従って慎重に祈りを捧げています。僅かな気の緩みがエッグタルトの味を変えてしまいますから、彼らの顔が難しくなるのも当然です。やがて神秘的な香りを漂わせる生地が、銀製の大きな鍋へ次々と注がれてゆくのです。祈りで食べものを作るなんて、いったい誰がそんなことを思いついたのでしょう。
「ああ、食べてみたいものです」
ゴッホ氏はベネという老人から金龍蛋撻を教わりました。リスボアのカジノで偶々出会ったそうです。ベネ氏はとある界隈では有名な人物で、カジノへは送迎専用車で乗りつけてくるフゴウであるということでした。彼は金龍蛋撻を振舞いながら、カジノで果てしなく遊んでいるのです。まことに夜の街というところは不思議な世界だと思われました。
澳門(マカオ)のカジノブログ:1
かくして、私は葡京酒店(リスボア)にて、無勝手流にブラックジャックを嗜んでいたのですが、一つ席を空けて隣にいた見知らぬ老年の殿方に不意に声を掛けられました。
「御一人ですか?」
茶色の背広に上等な帽子を被って、立派なる口顎髭を蓄えています。フィンセント・ファン・ゴッホ氏そっくりでしたので、私は心中ひそかに「ゴッホおじさん」と名付けていた方です。彼が身を寄せてくる際、鼻につくのは押入れの香り。殿方用の香水の香りでしょうか、はたまたフェロモンと呼ばれるものでしょうか。 この多重底の奥深い匂いが「大人の男の香り」なのかしら。この人こそ巷でしきりに噂される、あの「石油王」なのかしら。
老年の殿方から軟派を受け、銀幕の冒険が始まると、小さな拳をグッと握ったのも束の間でした。東洋系の彼が申すには、「小さいお金ではなく、大きいお金を掛けろ」とのことでした。もうちょっと、様子を見ます、と喉元まで出ました。けれど、私は澳門(マカオ)に働きたくないからギャンブルで稼ぎに来たのです。あの日味わった酔狂、身を委ねて誰もが予想だにしない一手で、一財産を築いてやると心に誓って祖国を飛び立ったのです。博才の有無?ツキを読む?ストラテジー?私はギャンブラー!この勝負受けて差し上げましょう!!!「仕方ないなあ」と手持全財産2,000HKDをオールインベット。ゴッホおじさんは、藁半紙を丸めたように笑っています。きっと私は、慎ましさのカケラもない憎たらしい顔をしていたことでしょう。
最初のカードは… キング
(キタ!!!)
ディーラー… エース
(えっ…)
2枚目のカードは… 2
(……)
ディーラー「ヒット or ステイ?」
私「…サレンダー」
先程の威勢は何処へやら、火鍋に浸かっているが如く身体が熱い。入店15分で全部スッてしまうところでした。藁半紙のゴッホ氏が視界に入ったと思いきや、こう語りかけました。
「楽しませてもらったので、2,000HKD分のチップを受け取ってくれないか」
ひょっとすると、この殿方は石油王と言わずとも、不動産所有王なのかもしれない。しかし、調和のある人生とは慎ましさを抜かしては成り立たぬものと思われます。
「いえいえそんな」
「遠慮せんでよろしい」
私は重ねて辞退しましたが、ゴッホ氏のせっかくの新設を無下に断るのもかえって非礼になりますし、この資本主義社会において長い髭には巻かれろという言葉もあるくらいです。ゴッホ氏は、私がどのような態度をとるのか興味津々といった面持ちで、その綺麗なエメラルドのような眼で見つめてくるのでした。私を見つめるぐらいならば、自動販売機を眺めている方が心楽しい充実した時を過ごせましょう。私は自動販売機よりも面白みに欠ける無粋者なのです。一歩譲って私がコカ・コーラ社の自動販売機だとしても、コーラしか売っていないため、隣の多種飲料を販売している自動販売機に圧倒されているいることでしょう。そして、私は小さな拳をグッと握りながら言いました。
「1,000HKDだけなら…」
澳門(マカオ)のカジノブログ:準備物(持ち物、必要な物)チェックリスト
澳門(マカオ)旅行の準備物(持ち物、必要な物)チェックリストです。これを怠って海外旅行中に粗相を起こしてしまい、友人君主の顔に泥を塗ってはお詫びのしようがないものです。
絶対に必要な物
・パスポート :残存有効期間1ヶ月+滞在日数以上必要
・パスポートコピー:コンビニでコピーで別管理
・顔写真2枚 :パスポート紛失時用
・クレジットカード:海外ATMで現金を引き出せます
・現金 :日本円。香港ドルへの両替は現地で
現地>カジノ>現地空港>日本順でレート良し
・海外旅行保険証書:書類郵送が間に合わなければ画面印刷
・航空券 :要確認。無くしたら大変
・旅行日程表 :郵送又はメールなどで受け取ったもの
・旅行Eチケット :プリントアウトを忘れずに
必要な持ち物
・スーツケース :お土産を入れる余裕があるもの
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・最新ガイドブック :タクシーは指差しで通じて便利
・海外WiFiレンタル:1日たったの300円!GoogleMap便利!
・着替え、下着靴下:滞在日数分より多めにね
・ビニール袋 :使用済下着を入れたり
・パジャマ :備え付けがないところ多いよ
・タオル :汗拭きにも
・折りたたみ傘 :スコールで天気が変わりやすいので必須
・洗面用具 :歯ブラシ、シャンプー、リンス、髭剃り
・化粧水乳液ボトル:100ml以下で1L以下の透明袋に入れようね
・常備薬 :飛行機偏頭痛、胃薬、風邪薬など
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・生理用品 :頑張って楽しもうな…
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・日焼け止め :香港、マカオは日差しが強いゾ~
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・ハンカティッシュ:ドリアンアイスを食べるときに必須
・充電器、変圧器 :予備電池忘れずに、電源は200/220V
・腕時計 :香港澳門の時差はマイナス1時間
・携帯用のバッグ :観光するときに持ち運ぶバッグ
・ノート筆記用具 :カード番号や、緊急連絡先等のメモに
・スマートフォン :GoogleMap、翻訳アプリは心強い
その他
・お菓子 :バナナは持ち込めません
・コンタクト :1日使い捨てタイプがベスト
・ライター :機内持ち込み1人1つまで
・タバコ :空港ではバラ売りしてないよ
カジノ
・小さい袋、鞄 :両手でチップを抱えてこぼさず安心
・カジノアプリ :初心者はアプリで流れを抑えてみては
・ギャンブラー魂 :絶対に外貨を獲得しような
海外旅行の前にやっておくべき事
・親類、知人へ報告 :宿泊ホテルの電話番号も伝えておく
・戸締り等の確認 :電気、ガス栓、カーテン気を付けて
・お土産の段取り :現地スーパーは格安で色々あるよ
事前準備を怠らず、最低限必要な準備物(持ち物、必要な物)を揃えて行くのが吉ではないでしょうか。澳門(マカオ)のカジノで口角を上げるための第一歩ですね。澳門(マカオ)女子旅以外のプログラムになりますになりますが、参加者の92%が女子一人旅!完全プライベートの癒し女子旅 という、最近テレビや雑誌でも話題沸騰の女子旅メディアで思いを馳せるのも良いかもしれませんね。
澳門(マカオ)のカジノブログ:プロローグ
これは私が澳門(マカオ)の酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いたブログであり、また、カジノにて美しく調和のある人生を歩み始める、もしくは小狡く立ち回るが全く意図せざるうちに貧困女子となる、歓喜と苦渋の可能性に満ちたブログでもあります。読者諸君の皆様に於かれましては、私の可愛さと間抜けぶりを二つながら熟読玩味し、エッグタルトの味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味われるのが宜しいでしょう!
さて、これは私が2度目澳門(マカオ)訪問時の魑魅魍魎に塗れたお話です。そもそものきっかけは、新卒で入社した社員旅行の行き先である澳門(マカオ)にて、ギネス記録認定、世界一のバンジージャンプを誇るマカオタワーのふもとのベンチに転がっていたエッグタルトでした。私はそのエッグタルトを眺めながら、「これ以上働きたくないからカジノで稼ぎたい」と熱烈に思ったのです。残念ながら、その抑えがたい欲求と珈琲の因果関係については明らかになっていません。しかし、社員旅行では同期先輩社員が多くいますし、好きなようにカジノに入り浸りギャンブルをするというわけにはいきません。万が一、ギャンブルに溺れて凶変してしまった私を社員の誰かに見られたら、今日まで築いてきた清貧潔白キャラが崩壊してしまいます。そこで私はカジノに行くのは謹んでいたのですが、最終日、ついに私は我慢できなくなって、単身で魅惑の世界へ乗り込んだのでした。
そして、社員旅行から3週間後、私は澳門(マカオ)にいました。更には、会社を退職してニートになった初日での女子旅です。
葡京(リスボア)界隈は、夜遊びに耽る善男善女がひっきりなしに往来していました。今日もエッグタルトを片手に、働きたくないからカジノに行って参ります。そんな転職活動女子、プアワーキングことプア子のREライフ in カジノ(澳門)編。